好き、かも。
夢中なのかもしれない。
いや、くびったけ、なんだな。
なんでもいい。
とにかく、彼に会うのが楽しみなんだ。
彼はそんなに格好良い男性ではナイ。
年齢は珍しく、アタシと同じか、少し上。
そして、これも珍しく、黒人ではない。
でも、これは恋では、ない。
・・・絶対に、違う。
あー ハイハイ。
早く、落ちを言えと言ってますね。
わかりましたよ。
チッ(・д・) ヤリニクイナーww
この噂の彼、会社の側にある某コーヒー店のお兄ちゃんである。
好きだとか、夢中だとか、くびったけとか、それは、この彼の作るコーヒーのことなんだけれど、
とにかく、彼の淹れたコーヒーは実に美味い。
会社の不味いコーヒーに辟易していた、アタシのハートに火を点けた、愛しの彼・・・
いや、もとい。 彼のコーヒー。 (w)
彼は、とても無口だ。
いつも、寡黙にエスプレッソなんぞを作っている。
ちょっと禿げてるけれど、仕事してる姿は、非常に渋くて格好良い。
もう一人、背丈も顔もプリンスと瓜二つのお兄ちゃんが、この店で働いている。
こいつが、無駄口が多く、そのせいか、かなり注意力散漫。
(アタシが言うのもなんだがw)
しょっちゅうオーダーは間違えるし、非常に不味いコーヒーを淹れる。
だから、アタシはプリンスだけが店をやっている時は、ドアを開けて店に入った後だろうが、
目があって挨拶を交わした後だろうが、踵を返して店を出てしまう。 (露骨ですネw
以前、そうやって出て行こうとしたところ、奥から出てきた愛しの彼に呼び止められた。
当然、ニコニコしながら戻ってきたアタシw
キラキラしたお目めと、長い睫毛をばたつかせ (ww)
「い つ も の ♥」
とオーダーするアタシにプリンスは
「君はどうして僕を避けてるんだ?」
と率直な質問をぶつけてきた。
真摯な瞳。 勇気ある彼の質問。
アタシは、失礼にならないように、慎重に言葉を選ぶ。
「なぜって、君のコーヒーは不味いから。」 (ぉぃっww)
大きなショックを受ける、プリンス。
愛しの彼は、赤いエスプレッソマシーンの向こう側で、コーヒーを作りながら、
笑いを噛み殺していた。
それ以来、プリンスは時々アタシにタダコーヒーをくれる。
「さあ、試してみてよ。 今度のは、おいしいハズ。」
挑戦的な瞳で、カップになみなみと注いだ、アメリカーノやら、ラテやらを手渡してくれる。
でも、一口飲んで、眉間に皺を寄せるアタシの顔を見る度に、がっくりと肩を落とすプリンス。
ごめん、ずいぶん上手になったんだけどね・・・。 汗
愛しの彼のコーヒーは、実に美味い。
何故だか、わからない。
プリンスと同じブレンド豆で、同じエスプレッソマシーンを使っているのにもかかわらず、
本当にコクも香りも違うのだ。
きっと、彼の手には、コーヒーが美味く淹れられる魔法が、かけられているに違いない。
毎朝のように、開店とほとんど同時に店に来るアタシに、愛しの彼は
いつものアメリカーノ・ダブルショットを素早く作ってくれる。
もはや、「い つ も の ♥」 も言わない。
「おはようw」 だけで出てくるアタシのコーヒー。
彼のちょっと照れた笑顔と、美味いコーヒーで始まる一日は、まんざら悪くない。
ぁー、プリンス君は、コーヒー作らないで、掃除でもしていなさいw
chu♥
く~る